世界の喉元・ホルムズ ── エネルギーが細る時
乱世を読む ── 経営者のための易経と世界情勢
第2回 / 2026年6月17日|易stratgy.lab
事業の足元を流れる「見えないエネルギー」
ガソリン代が増え、工場やオフィスの電気・ガス代が請求のたびに上がり、配送業者からは物流費改定の要請が届く。多くの中小企業は燃料を直接輸入しているわけではありません。しかし、蛇口から水が出るように使ってきた電気や燃料の背後には、地球規模の物流の「喉元」があります。その喉元がいま、細りつつあります。
事実 ── ホルムズ海峡と日本のエネルギー
ホルムズ海峡は、世界の海上原油取引のおよそ4分の1(約25%)が通過する世界最大級のチョークポイントです(米エネルギー情報局〔EIA〕等の集計、2025〜2026年)。そして日本の事情はさらに際立っています。原油輸入の中東依存度は約93.5%、そのほぼ全量がこの海峡を通って届きます。LNGも、調達の多角化が進んだとはいえ、ホルムズ経由は輸入全体の約6.3%(カタール5.3%・UAE1.0%/財務省「貿易統計」に基づくジェトロ集計、2026年)を占めます。
国内では、電気・ガス料金への補助(激変緩和措置)が2026年7月使用分から9月使用分まで実施され、標準的な家庭で3か月あわせて約5,000円の軽減が見込まれます。ガソリン等の燃料油補助も継続し、2026年6月時点で1リットルあたり27.0円です(経済産業省・資源エネルギー庁)。——いずれも、海峡が細る間の「水位調整」です。
易とのシンクロ ── これは「坎(かん)」の相である
この情景を、易経は驚くほど正確に言い当てます。卦の名は「坎(かん/習坎)」。坎は自然界では「水」を、象徴としては「険難」と「隘路(狭い通路)」を表します。坎が二つ重なる「習坎」は、難所が次々と現れ、底の見えない谷を水が繰り返し流れていく——連続する険しさの卦です。
世界のエネルギーの喉元が、軍事的・政治的な緊張で「細る」。これはまさに「水が重なる隘路」=習坎そのものです。偶然の比喩ではありません。坎が描くのは「一つの隘路の先に、また隘路が現れる」という構造であり、ホルムズの緊張・保険料の上昇・補助の期限・為替の重し——が層をなして続く現在の姿と、形が一致しています。
坎は、水の振る舞いとして読むと示唆に富みます。水は険しい谷でも慌てて飛び散らず、まず低い凹みを満たし、器が満ちてから次へ流れる。坎とは「険を前に、満ちるのを待って進む」時の構造なのです。
この構造が意味すること
坎の相は、中小企業の現実に固有の形で現れます。大企業のような長期固定契約・為替ヘッジ・即時の価格転嫁を持たない中小企業では、隘路が細るほど、コスト上昇が緩衝材を通さずに直接「利益の余白」を削ります。補助金はその余白を一時的に埋める水位調整ですが、期限付きである以上、隘路そのものを広げるものではありません——これが構造としての現在地です。
ここで、易が一貫して説くもう一つの構造が表れます。乱れ(否)を招くのは、不安に駆られた「陽の上滑り」だということです。エネルギー不安が募ると、人は誰しも燃料・在庫の買い占めや過剰な調達へ逸りがちになります。ところがその逸りは、外の隘路(坎)の上に、資金繰りという内側の隘路(もう一つの坎)を自ら重ねる動きにほかなりません。坎の上に坎を積む——それが習坎の悪い側の現れ方です。逆に言えば、「足るを知る落ち着き」で器を満たす者から、水は次へ流れていく。これは戒めである前に、卦が示す力学そのものです。
結び ── 隘路は「観た者」から渡れる
坎は、渡れない卦ではありません。坎には「険の中にあっても、まこと(信)を失わなければ通じる」という芯があります。水が器を満たして進むように、構造を正しく観た者から、隘路は通っていきます。
世界の喉元が細るという事実を、ただ不安として消費するか、それとも「いま自社は坎のどの位置にいるのか」を観る手がかりにするか。その差が、同じ隘路を前にした経営者の分かれ目になります。私たちは参謀として、この水位を一緒に観ていきます。
易stratgy.lab / 経営者のための易学コンサルティング / 2026年6月17日

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